ジャディアンス
ジャディアンスの開発経緯
ジャディアンス錠(一般名:エンパグリフロジン)は、ベーリンガーインゲルハイム社で開発されたナトリウム・グルコース共役輸送担体2(sodium-dependent glucose co-transporter 2:SGLT2)阻害剤です。 腎臓に血糖値の調整に関与しており、原尿中に排泄されたグルコースは、腎の尿細管で99%以上が再吸収されています。腎におけるグルコース再吸収の約90%は、主に近位尿細管に発現するSGLT2 によって行われており、本剤はSGLT2を阻害し、グルコースの再吸収を抑えることで、尿中へのグルコース排泄を促進し、血中のグルコース濃度を低下させると考えられています。 また、本剤はSGLT2に対して優れた選択性を示し、その効果が長時間持続することから、一 日一回投与での効果が期待できます。 国内外における非臨床、臨床試験の結果よりジャディアンス錠10mg 及び 25mg の有効性及び安全性が確認されたことから本邦における本剤の製造販売承認申請を行い、「2 型糖尿病」を効能・効果として 2014 年12 月に承認されました。なお、海外においても2型糖尿病治療薬として欧州では2014 年5月に、米国では 2014年8月に承認されています。
更に心不全への適応
米国食品医薬品局(FDA)の「新規糖尿病治療薬の心血管系疾患発症リスク評価に関する新基準」に従って長期投与時の安全性を検討するため、心血管リスクの高い2型糖尿病患者を対象として実施されたEMPA-REG OUTOCME®(1245.25)試験の結果に基づき、慢性心不全への適応拡大に向けた開発を開始しました。 糖尿病合併の有無を問わない左室駆出率が低下した慢性心不全患者を対象とした、本剤 10mgを用いた第III相臨床試験において有効性及び安全性が確認されたことから、慢性心不全に対して適応拡大するため、ジャディアンス錠10mgの製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、2021年11月に「慢性心不全ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」に対する効能又は効果、用法及び用量の追加承認を取得しました。なお、海外においても左室駆出率が低下した慢性心不全治療薬として欧州では2021年6月に、米国では2021年8月に承認されました。さらに、糖尿病合併の有無を問わない左室駆出率の保たれた慢性心不全患者を対象とした、本 剤10mgを用いた第III相臨床試験において有効性及び安全性が評価されたことから、左室駆出率によらず慢性心不全患者への投与が可能となりました。なお、海外においても左室駆出率の保たれた患者にも適応可能な慢性心不全治療薬として米国では2022年2月に、欧州では2022年3月に承認されています。
参考文献
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 「ジャディアンス インタビューフォーム」