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デュタステリド

デュタステリドとは​

デュタステリドAGA発症の原因であるDHT(悪玉男性ホルモン)へ変換する5αリダクターゼの「Ⅰ型」「Ⅱ型」どちらも阻害します。「Ⅱ型」のみ阻害するフィナステリドと比較し、発毛効果が1.6倍、育毛効果が1.45倍と報告され、2)新たなAGA治療として注目が高まっています。

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デュタステリドの背景 (ザガーロの有効成分でありジェネリック医薬品名)

主成分デュタステリドは、日本では「アボルブ」として2009年に前立腺肥大の治療薬として承認されました。その後副作用として発毛効果を認め、デュタステリドがDHTの生成を抑制する事がAGAに深く関与すると考えられるようになり、AGAを適応症とするデュタステリド治療薬の開発が進められる事になりました。2009年に韓国で承認されましたが、アメリカやヨーロッパでは販売戦略上の理由によって、男性型脱毛症に対する開発を行わないことが決定されています。日本においては「ザガーロ」が2015年に承認され、2016年から販売が開始されました。その後ジェネリック医薬品※として「デュタステリド」が様々な製薬会社で製造・販売されています。

​※ジェネリック医薬品:先発医薬品と治療学的に同等であるものとして製造販売が承認された薬品の事​。詳しくはこちらをご覧ください

デュタステリドはカプセル?

多くのAGA治療薬は錠剤ですが、デュタステリドの多くは淡黄白色不透明の長楕円形の軟カプセル剤取り扱っている事が多いです。カプセルの内容物が口腔咽頭粘膜を刺激する場合があるので、カプセルは噛んだり、開けたりせずに服用するようにお願いします。また本剤は経皮吸収されることから、女性や小児はカプセルから漏れた薬剤に触れない、漏れた薬剤に触れた場合には、直ちに石鹸と水で洗うようにお願いします。

​より詳しいカプセルの注意事項はこちらをご確認ください​。

薬理効果

AGA※の原因はテストステロンと呼ばれる男性ホルモンと還元酵素5αリダクターゼが結びつくことで生成される「ジヒドロテストステロン(DHT)」です。DHTの作用によって毛周期※の成長期が短くなり、毛包がミニマム化する事で抜け毛の原因になります。フィナステリドは5αリダクターゼII型を選択的に抑制することで、抜け毛の予防や発毛作用をもつのに対して、デュタステリドは5αリダクターゼI型,II型の両方を阻害するため、より強い抜け毛予防と発毛に対する効果を認めます。

※毛周期についてはこちらをご参照ください。

​※AGAについてはこちらをご参照ください。

​※フィナステリドとデュタステリドの違いについてはこちらをご参照ください。

<用法及び用量>

男性成人には、通常、デュタステリド0.5mgとして1日1回経口投与する。

<用法・用量に関連する使用上の注意>

・ カプセルの内容物が口腔咽頭粘膜を刺激する場合があるので、カプセルは噛んだり開けたりせずに服用させること。

投与開始後 12 週間で改善が認められる場合もあるが、治療効果を評価するためには、通常 6 ヵ月間の治療が必要である。

<効果>

国内で実施されたデュタステリド0.5 mg/日を用いた、120 名の男性を対象とした観察期間 52 週間の研究において38)、直径30μm 以上の非軟毛数、硬毛数、非軟毛直径が52週に各々増加した。皮膚科医頭頂の写真評価でベースラインより有意に毛量が増加した。この結果を受け、ガイドライン※では男性型脱毛症に対するデュタステリド内服の発毛効果に関して、“高い水準の根拠があるので内服療法を行うよう強く勧める”と結論づけています。本剤は投与開始後 12 週間で治療効果が認められた。個々の患者により効果の発現時期は異なるものの、本剤の治療効果を評価するには、通常6ヵ月間の投与を継続する必要があると考えられる。

※「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」より引用

デュタステリドとフィナステリドとの比較

症例数が最も多い本邦を含めた国際臨床試験でデュタステリド0.5 mg/日とフィナステリド 1mg/日を用いた、917名の男性を対象とした研究2)において、デュタステリドはフィナステリドに比べ、発毛効果が1.6倍、育毛効果が1.45倍であると検証結果報告がされています。

​デュタステリドとフィナステリドの違いについてはコチラをご参照ください。

デュタステリドが効かない? →有効なのは「AGA」のみ

よく患者様から「デュタステリドは本当に効果はあるの?」と質問される事があります。

治療効果の高いと言われているデュタステリドですが、男性ホルモン(DHT)に抑制する発毛薬のため、AGA以外の薄毛や脱毛症では効果はありません。薄毛の原因の多くはAGAですが、AGA以外に脂漏性脱毛症や円形脱毛症などがあります。これらの疾患は皮膚炎、ストレスやアトピー、自己免疫疾患などが原因であり、男性ホルモンの影響で薄毛が起こっているわけではないため、AGA治療薬での改善は見込めません。その為、医師の診察を受けて原因を診断した上で処方される事が大切です。ご不明な点があれば気軽に当院へご相談ください。

<副作用>

デュタステリドの副作用に関して917名の男性を対象とした研究2)において

・性欲減少(3.3%)、インポテンツ(5.4%)、射精障害(3.3)等の性機能低下

・その他(1%未満)

発疹や頭痛、抑うつ、腹部不快感、乳房の女性化や痛みなどの乳房の症状、そのほか肝機能障害やアレルギー反応、むくみやめまい等

​が報告されています。しかし性機能関連の発現割合はプラセボ群においてほぼ同様であったため、性機能関連の有害事象が大きな問題となる可能性は低いと考えられています。​しかし副作用は薬を服用してすぐに表れるものもあれば、長期的に服用することで現れるものもあり、服用する方の体調によっても変わってくるため、少しでも身体に異変を感じた時には、すぐに専門医に相談しましょう。 

詳しくは

​「デュタステリドの副作用」

参考:グラクソ・スミスクライン株式会社 医薬食品局審査管理課「審議結果報告書」

デュタステリドと前立腺との関係について

また、フィナステリドと同様にデュタステリドを投与中において、前立腺癌診断の目的で血清 PSA濃度を測定する場合は2倍した値を目安として評価とされています。4)

その為、かかりつけ医受診や健診等の際は必ずデュタステリドを内服している事を忘れずに伝えましょう。

デュタステリドは効かないといわれる理由について

デュタステリドは効かないといわれる理由についてとして以下が考えられます。
①飲み始めてすぐにやめてしまうケースです。投与開始後 12 週間で改善が認められる場合も理ますが、治療効果を評価するためには、通常6ヵ月間の治療が必要とされています。その為、効果が出る前に「ぜんぜん変化がなかった」と感じ、服用をやめる例が挙げられます。

 

②効果に満足して飲むのをやめてしまうケースです。効果を実感してから継続して服用を続ける事でAGAの進行を抑制する事が出来ます。しかし「生えてきたからもういいか」と自己判断でやめてしまうと、AGAの原因物質であるDHTの生成が抑えられなくなりまたヘアサイクルが乱れ、抜け毛が増える状態に逆戻りしてしまいます。その為AGA治療薬に関しては、症状の改善だけでなく、その後発毛した髪を維持するためにも薬を服用し続ける必要があります。

②頭皮環境や髪の毛に気を配らない状態では、効果が感じられないケースも考えられます。自分に合ったシャンプーで頭皮を清潔にする、規則正しい生活を送る、たんぱく質や亜鉛といった栄養素をきちんと摂取するなど、健やかな髪の毛が育ちやすい環境作りをしましょう。

 
デュタステリドに耐性はあるのか

「同じ薬を服用し続けると耐性がついて効かなくなりそう」と考えがちですが、ザガーロには長期間の使用で耐性がつくという医学的根拠はありません。むしろAGA治療のガイドライン上では6ヶ月以上長期間の服用を推奨しています。

<注意点>
①女性・20歳以下は服用できない

デュタステリドは男性AGAのみに適応があります。妊娠中や授乳中の女性が体内に取り込むと、胎児に悪影響を及ぼす恐れがあります。そのため女性の服用は禁止されています。また20歳未満で服用した場合の有効性や安全性は確立しておらず服用できません。

②肝機能に障害がある人は服用できない

デュタステリドは肝臓で代謝されることから、肝機能に障害がある方への投与が禁じられています。

③経皮吸収に気をつける

デュタステリドのカプセルは経皮吸収されるため、飲み込まなくても、カプセルの中の薬剤に接触しただけで影響を受けてしまいます。そのため女性や子どもが薬剤に触れることがないよう注意が必要です。触れてしまった場合はただちに石鹸と水で洗うようにしてください。またカプセルを開けて中身を飲もうとすると、女性や子どもが飛散した薬剤を取り込んでしまう可能性があるため、カプセルのまま飲んでください。

④服用期間から6か月先まで献血は控える

服用中は献血をすることができません。服用をやめてからも、6か月ほど期間をあける必要があります。

⑤飲み合わせに注意

一部の薬には、ほかの薬との飲み合わせによって副作用や効果が薄れてしまうことがあります。デュタステリドに併用して飲んではいけない「併用禁忌薬」はありませんが。しかし「併用注意薬」としてベラパミル塩酸塩、ジルチアゼム塩酸塩などのカルシウム拮抗薬が挙げられるため、常用している薬がある場合は、必ず医師に伝えましょう。

まとめ

・デュタステリドの特徴は、DHTに変換する原因となる5αリダクターゼの「Ⅰ型」「Ⅱ型」どちらも阻害する事で、フィナステリドと比較して発毛効果が1.6倍、育毛効果が1.45倍である。

​・個人差はあるものの、効果が実感できるまで少なくとも6カ月程度は内服を継続し効果を確認すべきである。

・内服をやめるとDHTの生成が抑えられなくなりまたヘアサイクルが乱れ、抜け毛が増える状態に逆戻りしてしまうため、髪を維持するためにも薬を服用し続ける必要があります。

・副作用として性腺機能の低下が挙げられるが、実際の研究では性機能に関する副作用はないと報告れている。しかし服用する方の状態によって変わるため、少しでも身体に異変を感じた時には、すぐに専門医に相談しましょう。

​・前立腺癌診断の目的で血清PSA濃度を測定する場合は2倍した値を目安として評価すべきである。

参考文献 

1)Olsen EA, Hordinsky M, Whiting D, et al: The importance of dual 5alpha-reductase inhibition in the treatment of male pattern hair loss: results of a randomized placebo-controlled study of dutasteride versus finasteride, J Am Acad Dermatol, 2006; 55: 1014―1023.(レベル II)

2)Gubelin Harcha W, Barboza Martínez J, Tsai TF, et al: A randomized, active- and placebo-controlled study of the efficacy and safety of different doses of dutasteride versus placebo and finasteride in the treatment of male subjects with androgenetic alopecia, J Am Acad Dermatol, 2014; 70: 489―498.(レベル II)

3)Tsunemi Y, Irisawa R, Yoshiie H, et al: Long-term safety and efficacy of dutasteride in the treatment of male patients with androgenetic alopecia, J Dermatol, 2016; 43: 1051―1058.(レベル III)

4)Andriole GL, Marberger M, Roehrborn CG, et al: Clinical usefulness of serum prostate specific antigen for the detection of prostate cancer is preserved in men receiving the dual 5alpha-reductase inhibitor dutasteride, J Urol, 2006; 175: 1657―1662.(レベル II)

5)Choi GS, Kim JH, Oh SY, et al: Safety and tolerability of the dual 5-alpha reductase Inhibitor dutasteride in the treatment of androgenetic alopecia, Ann Dermatol, 2016; 28: 444―450.(レベル III)

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